事業のタネを生むのは「無償の愛」Vol.4

 
BANNER-1920-1080-vol4.jpg
 
 

“共感”はどうすれば生まれるか?

共感を得るための第一歩、無償の愛の出し方

鳥越 共感を生むことで支持者が増え、事業は大きく成長していくと思うんですが、ではどうすれば共感を生み出すことができるのでしょう。

勝屋 前回(「事業の成長は人。人の成長を促すには?」)話していたように、事業の成長には人の成長が大切なので、まずは自分自身が感じている恐れやエゴに気づいて、そこから脱却して、情熱や愛を持って接するようにすることが大事ですよね。

鳥越 その情熱や愛を自分から無償で相手に出していかないと、相手は自分を支えてくれませんし、周りからもいいフィードバックはもらえなくて成長は止まってしまう。

勝屋 そうです。

鳥越 これは逆に考えればわかりやすくて、相手をコントロールしようと自分の恐れを隠して、例えば部下に「いつまでにこれやれ」という恐怖で縛ってしまう。

自分自身は守られるかもしれないけど、フィードバックはおろか、間違っていても誰も何も言ってくれなくなる。つまり、成長も止まる。

勝屋 そうなんですよ。誰からの共感もないですからね。

鳥越 かつて僕自身が経験したんですよ。自社の事業であるサービスをテストローンチしたんですが、ユーザーの反応を見て、正直これでは全然ダメだなと思い知ったんです。精神的にも肉体的にもボロボロで、猛烈な腹痛もあって。

 
 
IMG_5281.jpg
 
 

勝屋 精神が追い込まれると肉体にきますからね。

鳥越 盲腸かと思うぐらい痛くて、幸い単なる腹痛でしたが、とにかくボロボロで。その時、自分自身で立ち直るために周りにいるクルーにヒアリングしたんです。「この事業うまくいかないんだけど、どうすればいい?」って。

勝屋 かなり正直なヒアリングですね。

鳥越 そう正直にです。そしたら、クルーたちがすごく良いアイデアをくれるわけですよ。

勝屋 例えば、どんなアイデアだったんですか?

鳥越 1つ挙げると、そのサービスにはユーザーのコメント欄がなかったんです。これは僕自身が他の動画サービスを見ていて、コメント欄が荒れているのが嫌だったので、コメント欄をなくしたんです。

勝屋 一見良さそうに思えますけどね。

鳥越 そうしたらクルーの1人が他社のサービスをたくさん紹介してくれて、僕に直接見せてくれたんです。

「このサービスは、これだけユーザーを獲得していて、実際にやってみると面白いし、一般の人はこういうのが好きなんです」って。

勝屋 フィードバックをもらえたんだ。

鳥越 それから他社のサービスを僕自身が使い込んで、研究して、徐々に15、16歳ぐらいの若い世代のユーザーがなぜ毎日2時間も3時間も動画サービスを見ているかが、感覚として分かってきたんですよ。

勝屋 頭ではなく、感覚としてね。

鳥越 そう感覚として。コメント欄のこともクルーが言ってくれなければ、気付けずに自分の理想ばかり詰め込んだままだったと思います。

その時は、その後もクルー全員と話したんです。それで得られたのが、自分から無償で愛や情熱を出さない限り、相手は支えてくれないということだったんです。

弱い自分をさらけ出しながら、
日々の鍛錬を怠らない

勝屋 鳥越さんが余計なプライドを捨てて、周りのみんなに素直な気持ちで話を聞いたことで、みんなも鳥越さんを助けたいと思えた。うん、まさに愛だね。

鳥越 そういう状態に僕自身がならないと、みんなも言いづらいんですよね。「こんなことぐらい、鳥越さんはわかっているんじゃないか」って思われていることは多い。だから言えない。

でも、実際は、僕は全然気付けていなかった。こういう以前の僕みたいな状況に陥ってしまうケースって割と多いんじゃないかと思います。

 
 
IMG_5311.jpg
 
 

勝屋 多いですよ。昔の僕なんかも、どうしても一段上から若い世代を見てしまう。

鳥越 なんの疑いもなくね。

勝屋 でも様々な苦しい経験を経て、今の僕はまったく反対になれた。そうするといつも学びを得るのは20代、30代の人からの方が多い。

彼らのことをリスペクトする気持ちを持てたら、もっと社会は良くなるし、僕と同世代の人たちも、もっと豊かになれるんじゃないでしょうか。

鳥越 僕も勝屋さんには、フィードバックがしやすい(笑)。こうしたらいいんじゃないですか、とかかなりフランクに言えます。でも、こういうことが言いづらい人もいっぱいいるのも事実です。

勝屋 いますね~!周りが言いづらい雰囲気を作ってしまっている。ただそれはもはやクセですね。そういうクセの場合と、もう1つの原因は自分が若い人よりちゃんとしないといけないという勝手な思い込み。

鳥越 自分がちゃんとしなければという“妄想”はなくていいんですね。それを無くすことで、自分の弱さも出せますから。ただし同時に、自分ができることは日々鍛錬しなければいけないですが。

勝屋 それって、より自分と向き合うということでもある。

鳥越 昔、弱い自分だけをさらけ出してみたのですが、その時はチームがワイワイ賑わってはいても、振り返ってみると事業成長していなかったり。

勝屋 あるある。

鳥越 だから、「自分は全然できない、わからない」と弱みをさらけ出しながら、日々鍛錬して、できなかったこともできるようになっていくことが大切だと肝に命じています。

勝屋 ところが、IBM時代の昔の私のようになると、どうしても一段上からコミュニケーションを取らないと、自分のバリューがないと思い込んでしまう。でも、本当のところバリューなんてない(笑)。

鳥越 そういう時ほどないケースが多い(笑)

勝屋 でもね、一旦対等な目線で周りと話せて、自分の弱みも共有できるようになれば、絶対にバリューは見つかる。だって、色々な経験もしているしスキルだってあるんだから。そう気がつきました。

鳥越 そういうせっかくのバリューももし利害で動いてしまっていたら機能しないし、自分もツラくなってしまうんですよね。

勝屋 そこに気がつければ変わることができました。

共感の広がり方と、広がる理由

鳥越 勝屋さんの強みって「共感」だと僕は思っていて。イベントなどで勝屋さんが喋っていると大きな共感が生まれます。

それで、今のサービス作りの基本ってそれと同じだと思っていて、起業家の周りにビジョンに共感したメンバーが集まって、そして組織が生まれ、サービスが生まれ、ファンが生まれる。

勝屋 まさに。

鳥越 その組織の中で、生きる上で最も大事なことを共感しながらサービスを作るからこそ、周りの人も共感してサービスが広がっていく。だからこそ、共感は大事。じゃあ、共感はどうやって起こすのか。

勝屋 すごく大事なことは、中心となる人やチームの欲求の純度が高ければ高いほど、広がる可能性があります。

鳥越 欲求の純度が共感につながると。

勝屋 僕が講師をしているBBT大学(ビジネス・ブレークスルー大学)の教え子で、戸谷花菜さんという方がいます。彼女は幼少の頃からバイオリンを弾いていて、ドイツへも留学して音楽家を目指していました。


鳥越 すごい。

勝屋 ところが20代前半に難病を罹ってバイオリンが弾けなくなってしまったんです。

小さな頃からの生き甲斐をなくしていた彼女が、BBTで僕の講座を受講して、「本気でやりたいことや、好きなことで事業を立ち上げてみたいという思いが強くなり」アートポスターを販売する事業を始めたんです。(https://bbt.ac/students/drivemyself/totani.html)

鳥越 きっと勝屋さんから伝播したんですね。

勝屋 今、彼女はドイツを拠点にグローバルに展開しているんですけど、ローンチして数ヶ月で黒字化しました。

彼女がこれまでに本当に悩んで、そこから生まれ変わったことが書かれたウェブの記事があって、僕は感動したのでフェイスブックに上げました。

 
 
IMG_5421.jpg
 
 

鳥越 ええ。

勝屋 そしたら、僕の大先輩でネット業界で誰もが知っている人から連絡があり、「この人に投資したい」と。しかもリターンなしでいいと。額は数千万ですよ。

鳥越 共感が起こったんですね。それって、自分がどれだけ苦しんだかを素直に出すことができているということですよね。

勝屋 そう、自己開示してるんです。ネタでもプロモーションでもなく、素直に。だから、読んでいても気持ちが良いんです。所作とかその人のあり方がいい。だから共感を呼ぶし、ファンになってしまう。

鳥越 自分から無償で相手に届けていくということができると、周りにいる人はその人を通してその人の事業も応援したくなってしまうんですよね。

勝屋 こういうケースは結構多くて、比較的女性に多い気がします。しかも、マーケティングとかもほぼしてないんですよ。

鳥越 そこまで強い思いがあったり、好きであればいらないんでしょうね。

勝屋 でも、ついついSNSとかマーケティングがどうとか小手先に走ってしまうことってありますよね。でも、核がないから広がらない。そういうことは単なる手法で、後から付いてくる。核があるからこそ、SNSで加速する。

鳥越 さらに核となる夢を外に探し始めると、終わりのない旅に出ることになる。そんな苦い経験が私にもあります。しかし、外には答えはなかった。

勝屋 正解がない問いだからね。自分の中のものと、外のものをドッキングしないと答えは出ない。

鳥越 その答えが出てはじめて、共感を生むことができるんですね。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
対談記事Zeppelin Inc.