”失敗続きのUXデザイナー”鳥越康平の事業立ち上げお悩み解決

 
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事業立ち上げ時に起きがちな、代表と現場スタッフの距離感どう埋める?

3月某日、ZEPPELIN CEO 鳥越康平により、新規事業の生みの苦しみ・悩みを、等身大で語り合うイベントが行われた。参加者と積極的にディスカッションしたこのイベントには、新規事業創造における苦悩が多く寄せられた。

クライアントワークとしては1,000を越える「新規事業創造」をディレクションしてきた経験、そして会社を設立して14年の間に自らが乗り越えた失敗から、鳥越康平がイベントでのディスカッションに加筆してお答えする。

 
 

 
 

FAQ 1

 代表が「この事業をやるぞ」と先陣を切って走っていくことはあると思いますが、現場のスタッフとの距離感や、関係者の巻き込み方で、うまくいかないことも多々あると思います。そういう時にどうすればいいのか、課題を感じています。

 その会社は「受託」と「自社サービス」の両方を行っています。新規事業で作っている自社サービスはアプリなのですが、受託のメンバーから見ると「せっかく作った利益を新規事業が食いつぶしている」と感じる部分もあり、「何をやっているんだ」という距離感が生まれています。そのせいか「リリースしたよ」と言っても、誰も積極的にインストールしてくれないという悩みがあります。

 
 
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新規事業でアプリを作っている時にはよくある状況ですね。そういう組織において、社員や関係者をどう巻き込んでいくかは、悩みますよね。ZEPPELINでも2、3年前に、まったく同じ状況になったことがあります。そこで私がやったことを、いくつか紹介します。

周りの社員からすると、新しい事業の内容がどれだけ素晴らしかろうと、代表者にどれだけ熱意があろうと、あまり関係ないものなんですよ。

だからどれだけビジョンを語っても伝わりません。かといって無理やりアプリをダウンロードしてもらっても、人間は無理やりやらせられるものほど嫌なことはないじゃないですか。

「面白い」か「インセンティブがある」かで人は動く

じゃあどうするか? 結局のところ人が興味を持つ時って、「面白いな」と思うか、あるいは「自分にインセンティブがあるか(利益があるか)」のどちらかですよね。だからまずは、そのどちらかを作るのが大事だと思います。

そこで、「めちゃくちゃ面白くする」というのはひとつの手ですよね。面白いものに、人は自然と寄ってきます。

「新しいアプリがある」とか言うのは最後に回して、その手前で面白いものをたくさん作って、社員や関係者をある程度集めた上で、機能やビジョンの説明に持っていくのもいいと思います。そういう順番の逆転があってもいいんじゃないでしょうか。

バラエティー番組の司会をお笑い芸人がやるのも同じような理由ですよね。面白いことをはじめに見せることによって相手をグイグイ引き込んでいく。人間ってそういうものだと一度気がつけば、意外に簡単な仕掛けで状況が変わることだってあると思います。

もうひとつ大事なのは、インセンティブの設計だと思います。

インセンティブの設計とひとことで言っても、「それをやったら給料が上がる」というのではダメだし、「ボーナスが出る」というのでもダメなんです。給料やボーナスに反映されるような即時的なものではなくて、「自分の成長に繋がる」とか「自分の未来に繋がる」というインセンティブを、時間をかけてちゃんと設計する必要があると思います。

たとえば「この事業のこういうところに携わってもらえたら、あなたの未来に繋がるよ」とかいうことですね。

そのうえで、「受託の事業を12ヶ月やるうちの1ヶ月間だけ携わって欲しい」とか、「日々の業務の中で10%だけ、この事業のこの部分に携わって欲しい」とか、具体的に頼むのもいいと思います。

そうやって、一度携わってもらって「自分ごと」になってしまえば、そこからはスムーズになると思います。

いきなり全員は巻き込めない。2、3年の時間軸を設定して考える

 
 
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それに加えて、そういう”巻き込み“をいきなり全社員に向けてやろうとしないことです。

たとえば、この会場にいるみんなで「新しい事業を作ろう!」となったとします。そうすると、誰かが発起人になるわけです。そこでいきなり全員を巻き込もうとする時ほど、めちゃくちゃになってしまいます。なぜかというと、新しい事業を受け入れるための意識がまったく整ってないからです。

意識が整ってないところに突然言われても、事業の方向性もビジョンもビジネスモデルも、何も伝わりません。最初からビジョンを説明していきなり巻き込もうとするのは、そもそも無理な話なんです。

だから僕は、2、3年ぐらいの時間軸を踏まえた上で、いちばんはじめに乗ってきやすそうな人から、ちょっとずつ誘って仲間にしていきました。「面白い」と思ってくれた人や、「インセンティブがある」と感じてくれた人を、少しずつ順番に巻き込んでいったんです。

新規事業を始めるときって、そもそもすごく時間がかかるものなんです。市場の話を詰めるだけでも何ヶ月もかかるし、事業のロードマップの説明だけでも何ヶ月もかかります。しかもそれは何度も言い続けなければならないし、インセンティブと一緒に説明していかなければならないんです。

だから、はじめから長いスパンで捉えておくことは大事ですよね。少なくとも2、3年の時間軸で捉えて、自分の頭の中で「ここから切り崩していって、2年後にはこういう状況になっている」と設計してくことで、少しずつ状況は変わっていくと思います。

 
Zeppelin Inc.