共感を土台にしたDXのデザインはいかにして可能なのか?

 
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―いきなりですが2か月でDX(デジタルトランスフォーメーション)を実施してくださいと言われたら、テクノロジストとしてはどんなことを考えますか?

例えば普段の生活をゲームにしてしまうのは面白いかもしれません。SLAM、ドローン、ロボットなどのテクノロジーを利用して、東京をRPG(リアルワールド・ロールプレイングゲーム)の舞台に変えます。

―そんなことができるんですか?

今では至るところでそういう技術を実際に体験することができますよ。高画質のプロジェクターで壁に仮想現実を写しだして、映像にシンクロさせた音楽を流しているスペースがあるんです。

 

これを応用して、たとえばプロジェクターとカメラを搭載したドローンを飛ばして、カメラで捉えた街並みに仮想シーンをプロジェクターで投射する。ドローンの稼働にはSLAM(自己位置推定+環境地図作成)というコンピュータービジョン技術を使います。それで、街に放ったドローンで、ゲームの参加者全員を追跡する。AR/MRグラスを使えば、インタラクティブな体験にすることもできます。決して難しい話ではない。

 

―けっこう難しそうに聞こえますが…?

思わないですね。正直にというと、テクノロジーのこと、そしてDXを考えるとき、自分は使い方というよりは、それを使って何ができるか、どんなインサイトをもとにプロダクトを実現するかを先に考えるようにしています。たとえば携帯をとっても、使い方にとらわれがちになりませんか?そういうマーケティングも多いですし。

そうじゃなくて、携帯を使ってそこから何を実現できるか。そこを意識するんです。ハッカー思考と呼ばれる考え方なんですが。ZEPPELINのテクノロジストはそういった考え方をする人が多いと思いますね。 

 
 

テクノロジーで人とサービスの感情的な繋がりを創り出す

―テクノロジーは使いどころが大事ということですか?

んー、具体的な例があったほうが良さそうですね。

たとえば先週末、都内でスケボーしている人たちを観察していたんです。そのうちのひとりと友達になって、1日一緒に過ごしたんです。それで見ると、彼も、まわりの人も、みんなボロボロの靴を履いていたんですね。でもその割には、靴にかなりの注意を払っているみたいで。どうしてボロボロで汚れた靴をそこまで大事にしているのかが気になったんです。

そこで、新しい靴を最近買ってないのかどうか尋ねてみました。でも買ってない、と。次に、何か新しいことを最近したのかと聞いてみました。すると、新しい技を覚えたばかりなんだと誇らしげに言ったんです。

おそらく、新技を練習しているときにその靴を履いていたのでしょう。つまり靴は、新しい技の会得を表す、いわば戦利品だった。スケーターたちが靴をとても大事にするのは、足を守るものだからというのもそうですが、がんばった証であるからなんです。

 

だから例えば彼らはただIoT化された靴が欲しいわけじゃないんですね。壊れはしないけれども傷がついているように見える、つまり技の習得にかけた頑張りが一目でわかる靴が欲しいんです。テクノロジーは、人の特性である、特定のモノに対してエモーショナルな繋がりを持つということを助けるものでなければなりません。デジタルトランスフォーメーションとはテクノロジーを使うこと自体への自己満足ではあってはならないんです。

 
 
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―商品に感情移入する。それはどんなビジネスでも同じでしょうか?

人やコミュニティの文化でどの商品かは異なりますが、法則はどんなビジネスでも応用できます。

たとえばスケーターは服にとても関心がありますね。ブランドを着たいというより、ブランドになりたい、という思いが作用していると。

 

Supremeというブランドはいつも限定品キャンペーンを打って、この心理を利用しました。褒められたやり方ではないかもしれませんが、とても効果的なマーケティング戦略ですよね。限定品だと希少性があるし、限られた人しか持てない。そこがスケーターたちにウケる。

 

人を観察し、インサイトを溜め、その知恵を戦略へ変換する。グロースに携わるデザイナーやエンジニアは、こうしたインプットをもとに商品や機能をつくります。そういったことを私たちは行なっているんです。

  

―人は機械みたいに自動化された存在じゃなく、心を持っていると。

そうです。今大きな影響力を持っているTwitter、Facebook、Instagramなどのプラットフォームのローンチは、今までにない新しさを世の中にもたらしました。従来とは異なるコミュニケーションが可能になったわけですね。

携帯でそのアプリを開いたとき、毎回新たな体験が待っていました。通知という、ごく簡単な機能が、私たちの欲求を駆りたてました。つまり心が動いたんです。

 

他社のアプリは、インタラクションデザインとユーザー体験(UX)デザインを混同したがゆえに失敗に終わりました。インタラクションとは、検索やメニュー構成などの方法に関わるものです。アプリにもっと興味を持ってもらうためにユーザーの袖をそっと引くのがユーザー体験デザインです。

懐かしい思い出、友人と過ごした幸せな瞬間などが、ウェブで共有されたという通知を受けとるだけで、一日のありかたが随分と変わってくる。そうしたことの集大成がUXなのです。

今のデジタル体験こそ変わらなければいけない

―なるほど。私の経験ですが、Instagramにストーリー機能ができたとき、最初こそ楽しかったんですが、だんだん毎日チェックして最新の情報をキャッチしていないと、置いてきぼりになったような気がしてしまった経験があります。そういった興味を持ってもらうための取り組みが生み出す負の側面はどう考えますか?

 

それは「FoMo」と呼ばれる現象です(取り残される不安 = fear of missing outの頭文字)。ソーシャルメディアは人、社会、世界中の色んな国をひとつのプラットフォームの上で繋げるものですが、それが当たり前になってきて、みんなむしろそれに気疲れしてきてるんです。毎日見てると、面白かったことだって面白くなくなる。

 

今となっては、ほとんどの古いソーシャルメディアプラットフォームは、いかにユーザーをエンゲージさせるか。いかにビュー数、「いいね」数、フォロワー数などの数値を稼ぐか。そこしか考えてない。変わっていかないといけないんです。それも、すぐに。その領域こそ今どんなテクノロジーを使って課題を解決すべきなのか?を考えなければいけないと思っていますし、私たちも自らそこにアプローチしています。

 

―そうした感覚がまだまだ浸透していない日本で、新たなデジタルサービスを生み出していく課題は何でしょう?

今の課題ってどれも、コーディングとかアルゴリズムじゃなくて、文化に起因するものなんです。インターネットは、インフルエンサーとか、「いいね」とか、ビュー数といった概念に疲弊しています。現実の社会の文脈において大切とされていることを、もっと大事に扱っていく必要があると思います。もっと共感しあえる、デジタルなお付合い。そういう方向にコミュニケーションを再定義していかないといけません。それがSNSやSaaSをはじめとするサービスに必要になる視点だと思います。

 

学校にサークルが存在するのも、同僚どうし飲みに行くのも、共有される価値観や興味がそこに実在するからです。結局のところ、みんな誰かと一緒にいたいと思っている。そうした思いを商品という形に翻訳し、コミュニケーションを促すための面白い機能を考えればいい。ユーザーニーズ云々だけでなく、これって実は誰にでも当てはまることなんです。

 

私たちはそういった、いつの時代も変わらないものを見定め、新しいテクノロジーと人間の体験を繋ぎ合わせ豊かにしたいと、そう考えています。


 

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