ユーザー行動を変えるAI技術の今

 
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人工知能=AIは、今日の社会において効率化を促す様々な商品を生み出しています。日常生活への浸透が進むなかで、もはや一般常識として学んでおく必要があります。ZEPPELINのAIエンジニアがディープラーニング(深層学習)について、そしてそれが現在・未来の暮らしのなかで果たす役割についてお届けします。

AIが変えるデジタルサービス体験

―スマートアイテムやスマホなど、AIによる顔認証や声認証など新しい体験が生まれてきています。

中国では、学校の勤怠、ホテルや飛行機のチェックイン、怪しい人がいるかどうかなど、あらゆることに顔認証を使用しています。

コンピュータービジョンの技術が、コンピューターに「目」を与え、視界に入るものの理解を可能にしている。顔認証は、そうした大きな展望のなかのワンピースなのです。

Appleもそうですが、何千という企業がこぞって、コグニティブ・コンピューティングのいち領域でもある顔認証への投資を急いでいます。みんなそこに未来を見出しているわけです。

想像してみてください。ぶらりとお店に入って、欲しいものを手にとって、そのまま外に出る。レジ待ちはもちろん、財布からお金を出すなんてこともしなくていい。夢のように聞こえるかもしれませんが、Amazon Goは既にこれを実現しています。

 
 
Amazon Go

Amazon Go

 
 

電化製品やネット使用料がますます安価になった昨今、すでに高かったAIの需要がよけいに高まり、人工知能による自動化のニーズが日毎に増えています。Amazonのアレクサなんかは良い例ですよね。

ユーザー行動が、テキストを打つことから、機械に喋りかけることへと変化している。これはデジタルサービスにおいてはとても重要な変化です。技術がゲームチェンジをしてしまうのです。

―技術が体験を変えてきていることは分かります。ただ、正直なところそれを支えるAI、機械学習やディープラーニングなどの違いがよくわかっていません。

AIと聞くと、多くの人はマイノリティ・リポートとかブレードランナーとか、そういうSF映画に出てくるロボットやすごく進んだテクノロジーを思い浮かべると思うんですね。機械学習というのは、機械に知能を持たせることなので、あながち間違ってはいません。

そうした高次元の知能を目標にしてはいますが、実現にはまだ時間がかかるのが現状です。シンプルな課題を与え、解決方法を教えてあげる。それが今の機械学習です。

例えば機械に「犬」と「猫」を学習させます。そうすると動画などに登場した場合、識別してもらうことができます。学習させる対象がこのようにかなり限定的な場合、シャローラーニング(表層学習)と呼ばれます。

それに対してディープラーニングは、名前の通り、機械学習の深度が違う。アルゴリズムのレイヤーを何層も積み重ねて作るからですね。

ディープラーニングだと、動画に出てくる犬・猫に加え、例えば牛だとか、言ってしまえば地球上に存在するあらゆる動物のどれであっても、識別することができる。対象が未発見種だったとしても、種族を分別できちゃいます。

ひとことで言うと、より多くの知能を持たせた機械学習が、ディープラーニングということになります。

―どうして今、大事なんでしょう?

コンピューターの処理能力が進化し、強力なマシンが一般的に入手できるようになったこと、加えて情報を共有するためのネットワーク(インターネット)が成熟したおかげで、世界中のエンジニアが比較的簡単に機械学習に手をだせるようになりました。

TensorFlow、Keras、PyTorchなどの枠組みを使えば、数理モデルによる機械学習とその共有が容易にできてしまう。

必要なテクノロジーとナレッジが出揃ったことで、研究開発投資と同時進行的に、成果をあげることが可能になり実際の生活に及ぶところまで発展してきている。いまAIが重要視されているのには、そういう理由もあります。

AIの功罪と未来

 
 
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―そうしたAIが日常生活の隅々に至るまで活用されることの利点・欠点は何でしょう?

AIの活用が人の暮らしを向上させる。個人的にはそう思っています。でも、AIが悪用される可能性も十分にある。なんとも悲しい副産物ですが。画像や動画同士を結合させ、一見新たなコンテンツとして提示する、ディープフェイクといわれるAIが流行ってますよね。

実は、いたずらでウソのニュース生成するために生みだされた技術だったのですが、次第に、悪質なデマを流すために使われるようになってしまいました。

例えば、誰かを撮影してディープフェイクで加工すれば、実際は喋ってないことを言わせられる。アウトプットがリアルすぎることが問題だと思うんです。これからの若い世代に、クリティカルシンキングやデジタルリテラシーを教えることがどれだけ大切であるか、考えさせられますよね。

一方で、Microsoftが作ったInnerEyeという医療画像上で特定の病気を検出する技術だったり、Blue River Technologyがコンピュータービジョンと掛け合わせて作った次世代のスマート農業機械だったり、AIテクノロジーが非常に良い形で実を結んでいるのも事実です。

Walmartもつい最近、万引犯の検知にAIカメラの使用を開始しました。レジでスキャンされていない商品がレジ袋に入っている場合、カメラに見つかってしまうんです。似た事例は他にも数えきれないほど出てきています。

 
 
Microsoft InnerEye

Microsoft InnerEye

 
 

―世間では、AIに仕事を奪われるんじゃないかという不安もあると思うのですが。

内容が反復作業だと、自動化によって人の手が不要となった仕事もすでにあります。そういう、クリティカルシンキングを必要としない仕事がAIにとって変わられるリスクは、年々増えていくでしょうね。機械に学習させるが方が簡単で、安価だし、毎日24時間働かせてもミスを犯さない。

でもAIテクノロジーがまるまる人間にとってかわるというよりは、日常的に繰り返されるルーティンワークを引き受けて、負担を軽減してくれる。という感じでしょうか。

クリエイティビティが必要な仕事にも影響が出ていないわけではありません。AIの手によってつくられた作品を ― 楽曲、詩、小説など ― ご覧になったことのある方もいらっしゃるでしょう。

でも個人的な考えとしては、芸術作品を決定づける人間味や細かい感情の表現などは、AIに創出できないんじゃないでしょうか(少なくとも現段階では)。

―先月、森美術館の展示会に行ったのですが、機械とプロジェクターが繋いであり、画面には有名な絵が映しだされていて、それを機械がそっくりそのまま描き出してました。自動描画って言うんでしょうか? はじめて目にしました。

絵画とは何か? 画家がその想像力を筆先の動きでキャンバスに閉じ込めたパズル、と見ることもできます。何が言いたいかというと、インクや絵の具を非常に細かく分解していけば、そこにあるのは様々な波長の光を捉えた色素の集まりで。

そうした色素のパターン検知をAIに学習させれば、どんな見事な芸術作品も再現することができる。もちろん、機械に心があるわけではないので、画家が筆にこめた想いや熱は介在してません。情報を捕捉できても、想いや感情を体現できるわけではありません。

AI技術は、その透明性が担保され、広く共有された情報をソースとして使っている限り、良き目的に使えるものです。しかも、どこまで進化し、どこまで時間・空間を拡張していくかはまだ未知数。ワクワクしませんか?

 

 
Sai Htaung Kham サイ・タウン・カン  グリニッジ大学のビジネスインフォメーションテクノロジー科を修了、ヤンゴンコンピュータ大学のコンピュータ科学科を優秀な成績で卒業。機械による視覚情報の認識・理解で世界を読み解くモデル構築に造詣が深く、現在はコンピュータービジョンを扱うAIエンジニアとしてZEPPELINに勤務。前職ではインフラエンジニアとして働き、サーバー、ネットワーク、ミドルウェアなどについて広範な知識を有する。

Sai Htaung Kham サイ・タウン・カン

グリニッジ大学のビジネスインフォメーションテクノロジー科を修了、ヤンゴンコンピュータ大学のコンピュータ科学科を優秀な成績で卒業。機械による視覚情報の認識・理解で世界を読み解くモデル構築に造詣が深く、現在はコンピュータービジョンを扱うAIエンジニアとしてZEPPELINに勤務。前職ではインフラエンジニアとして働き、サーバー、ネットワーク、ミドルウェアなどについて広範な知識を有する。

 
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